見目、まだ綺麗な研究所を見つけた。研究所なら薬があるかも知れない。そう思って表へ回る。ドアは無い。無いと言うより破壊されていた。硝子を踏まないようにあたしはエントランスを通り過ぎる。足を怪我するからではない。ブーツの底は厚く頑丈だ。それよりも、中に居るかも知れないゾンビ達を警戒してのことだ。
研究所内は閑散としていて音一つしない。床に撒き散らされた小さな硝子片を踏む、あたしの足音以外は。廊下の両脇に並ぶドアも大半壊されているから、見通しが良くて助かる。
一番奥の部屋はロックが掛かっていた。暗証番号を入力する手間を省き、コンソールを蹴り壊す。思った通り警報は切られているらしく、無音のままドアが開いた。
中は綺麗で壊された物も少ない。どうやらここはゾンビに襲われずに済んだらしい。
けれど、壁に咲いた真っ赤な花の下で研究員らしい男が一人死んでいた。傍らには拳銃が転がっている。
「・・・あんた、馬鹿ね」
閉じこもっている最中に絶望したんだろう。一人だけここに逃げ込んだのだろうか。たった、一人で。
(周りを全部見殺しにして?)
あたしは拳銃を蹴り飛ばし、男に一瞥をくれてから棚を漁ることにした。・・・思った通り、治療薬が一つ。いつか役に立つはずだ。
「立たないに超したことないけどね」
――日暮れ前。壊れかけた彫像の陰で「あいつ」を待つ。あいつはとろいからちゃんと戻って来れるかも分からない。けれどあたしは律儀に待ってしまう。
「シェーラ」
低い声が呼んだ。
「遅いよバスター。もう帰るとこだった」
「すまない」
待ち人だった男、バスターは体格に見合わない弱々しい顔で笑った。筋骨隆々の癖に、あたしよりずっと大きな癖に、こいつは弱い。戦う意志を持っていないからだ。
その顔が、あたしはあまり好きではない。だから目を逸らし、バスターの抱えている「戦利品」を顎で指した。
「何それ」
「寝袋だ。最近のは入ったまま歩けるらしい」
「じゃ、あんた着たまま歩きなよ」
小さくバスターが笑った。笑うと目元がくしゃっとして子供みたいになる。その笑顔は、少し気に入っている。
「ほら行くよ。暗くなる前に撤収」
「分かった」
夕陽の中に影が二つ。女の影には左腕が無く、男の影には右腕が無かった。
体力100/食糧100
アイテム:治療薬、寝袋
今日のシェーラ:【探索】研究員らしき死体を発見。どうやら自ら命を絶ったらしい・・・治療薬(ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て)を得た! 食糧:-2
http://shindanmaker.com/235938
今日のバスター:【探索】ホームセンターを捜索。寝袋(【休息】が出た場合、本来の効果とは別にHPを1点回復する)を得た! 最近は歩ける寝袋というのもあるらしい。食糧:-2
http://shindanmaker.com/235938
※この時、食糧の-値を反映させるの忘れてました。
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