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夢を見ましょう

インクに浸したペン先で、そっと、静かに。

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ゾンサバ #6

 ――すっとりと下へ落ちて助かった。落下の衝撃に痺れる足を無理矢理引き摺りながら、あたしは上を見上げて思った。ここは下水らしい。となればあたしはマンホールを踏み抜いたのだろう。いや、元々に蓋が無く、上にがらくたが乗っていたせいで道に見えていたのか。幸い、落ちたあたしに気づいたゾンビは居らず、追ってはこないようだった。未だ追われるバスターが心配だが、今は自分の心配が先だ。

 暗い下水道、鼠の声がする中を手探りで進む。すると水音以外の音が聞こえた。
「・・・・・・」
(泣き声・・・?)
 中で反響するせいで判り辛いが、確かに人のすすり泣きだ。
「誰か居る?」
 呼び掛けに声はぴたりと止んでしまった。けれど直ぐ、「だれ?」と問う声が返ってきた。
「あたしはシェーラ。喋ってて、今そっち行くから」
「ぼく・・・ぼく、マイケル。横穴に居るよ、隠れてるの。こっちだよ」
 反響を追って目を向けると、暗がりの中に揺れるものが見えた。あれがマイケルの居場所だろう。目印にと白い野球帽を振ってくれているようだ。

 少年はここへ逃げ込んでもう一週間、ずっと隠れていると言う。
「リュックにいっぱいご飯があったんだ。けどもう少ししか無い。・・・ぼく、外に出るの恐いよ」
 膝を抱えて震える姿があたしの胸を叩く。心細いに決まっている。大の大人だって――あたしだって、恐いのだ。
「じゃ、あたしの食糧分けてあげるよ」
 本当? そう聞き返したマイケルの顔に弟が重なって、思わず抱き締めそうになったけれど、代わりに笑って頷いた。
「じゃあ・・・お姉ちゃんにこれあげる」
「何これ」
「お守り。綺麗だから拾ったんだけど、お礼にね。お姉ちゃんが無事でありますようにって」
 受け取れないと言ったあたしを振り切り、マイケルはそれをあたしの右手に押し込んでしまった。こうなると受け取らないわけにはいかない。
「ありがと、マイケル」
 握り締めた鍵の冷たい感触を携えて立ち上がる。
 ――バスターを探さなければ。

 ・・・シェーラ。小さく呼び掛けるが返事は無い。完全に逸れてしまったようだ。狭い路地でよもやと思ったが、忽然と消えてしまった彼女を探す前にゾンビ共を振り切らないとならなかった。そして漸く今、あの集団を振り切ったところである。しつこさだけはぴかいちだったせいで時間を喰ってしまった。
 彼女の行方に関する手掛かりは無い。が、取り敢えず下だろうと思う。あの状況で消えるとすれば、落ちたくらいしか考えられない。ならば地下室か、下水。入り口が何処かにあるはずだ。地面を見つめてうろうろしていたが、ある一点で視線が止まる。
 少女が倒れていた。白いワンピースを着たブロンドの子。まだ綺麗な身体は生者の証に見えた。だから駆け寄った。違和感など覚えなかった。――助け起こしてみるまでは。

 どろりと眼窩に溜まった眼球。こけて削げた頬。ああ・・・、
「しまった・・・!」
 振り払う手を掻い潜り少女が腕にかぶりつく。腐った死体の癖に力だけは恐ろしく強いのだ。噛まれた所が裂け、血が溢れる。

 殴り飛ばせ。引き剥がして頭を潰せ。

 頭の中で声がわんわんと唸る。
(できない、したくない、いやだ!)
 痛みよりも恐怖で泣きたくなった。俺に命令する声は、上官の声だ。絶対だ命令だと責め立てる声だ。
「おれはもうそんなことは嫌だ!」
 思い切り腕を振るう。反動に負け喰らいついていた少女が吹き飛ばされ、壁に当たってもんどり打つ。その隙に駆け出した。

(シェーラ、シェーラ、ああどこに居る!?)
 戦うことを辞めた右腕の欠如が、胸に重くつかえていた。


体力70→65/食糧76→71
アイテム:治療薬、寝袋/銀色の鍵(フラグB)

今日のS:【探索】銀色の「鍵」をお守りにしている少年と遭遇。食糧4と交換してくれる(アイテムではないクリアフラグBを得る)。強引に奪う? なら2ダメージで君のものだ。

今日のB:【戦闘】行き倒れた少女を発見。だが、それはゾンビだった! 油断し、5のダメージ!(この戦闘はアイテムの効果を受けられない) 食糧:-1
http://shindanmaker.com/235938

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早蕨紫苑
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自己紹介:
こちらは一次創作サイト Dreaming moomoo のブログであります。サイトへは上プラグインのリンクよりおいで下さいませ。
尚、当ブログ内に掲載されたSS、イラストの著作権は早蕨紫苑に帰属します。

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