その男に出会ったのは市街地のとある住宅密集地だった。正確にはその内の一軒の、厳重に戸締まりがなされた家が彼の根城だ。明らかに人の気配のするそこに目をつけたのは、あたし達の食糧袋の中身が乏しいからに他ならない。あわよくば幾らか分けてもらう腹積もりだったのだが、これがとんだケチ野郎。
「お前らにやる物なんて一つも無い! 大体、ゾンビに用なんて無いんだ!」
「俺達はゾンビじゃない、人間だ」
こんな相手にも穏やかなバスターの声音でも、男の警戒心は容易には解けないらしい。あたしが居てもやれることが無い上、寧ろ逆効果になりかねない為、ここはバスターに任せて探索に回ることにした。見た所男は武器を持っていないし、それならバスターが大怪我を負うことなど先ず有り得ないからだ。鍵付き防衛ハウスを離れ、バットを肩で弾ませながら周囲を見渡し歩く。閑静な住宅街だ。ゾンビの気配も無い。
(多分どっかに隠れてんだわ)
奴らは神出鬼没だ。知らない内に集まり襲い掛かってくる。全く厄介な連中だと思う。
三ブロック程歩いた所でコンビニを見つけた。窓ガラスがまだ残っているのを見るに、荒らされていないのかも知れない。一縷の期待を胸に中へ入り込んだが、どうやら世の中そう上手くはいかないようだ。外観の綺麗さに比例して中も空っぽだった。きっと殆どはここの住民達に持っていかれてしまったのだろう。
「何だ・・・期待ハズレ」
落胆の言葉を一つ残し、バスターの元へ戻ろうと思って――気がついた。
何故、こんなに暗い?
日が落ちるには早過ぎる。夕方とは言え、まだ夕日は地平線に掠ってもいないはずだ。なのに何故。答は簡単だ。振り向いたあたしの視界、窓ガラス一面に張り付くゾンビの群れ。
「だからこいつら嫌いなんだッ!」
一体何処にこれだけ隠れていたのやら、先程まで静かだった町並みが俄かに咆哮でどよめいた。仕方無くあたしはバットを構える。ガラスが割れ、外のゾンビが中に雪崩込んできた。
「うりゃああああああっ!!」
雄叫び一閃、振りかぶったバットがゾンビの頭部を潰す鈍い感触が掌に伝わり、気色悪さに背筋が寒くなる。とは言え、いちいち震えているわけにもいかない。悍気を奮う間も惜しみ、次々に迫るゾンビを沈めていくが、
「やだもう埒が明かない!」
――数が、多い。一人で捌き切れる量では最早無い。バスター・・・あいつが居たら、あたしを引っ張り出してくれるんだろうか。足を取られ転ぶ前の一瞬、やけに長い走馬灯みたいな一瞬の間に、あたしがそんなことを考えていた刹那。
「シェーラ!」
聞き慣れた声と、見慣れた腕が、あたしの前に降って湧いた。考える暇も無いままあたしはその腕を掴み、腕はあたしを軽々と引き上げて、ゾンビの群れから引きずり出した。
「走れ、シェーラ、逃げよう」
うん、と頷いたあたしの手を取り、バスターが走り出す。ふらついた足で半ば引きずられるようにあたしも走り、やがて街を抜けた辺りで漸く立ち止まった。肩で息をする二人は、どさりと地面に倒れて暫くは無言であった。
「・・・ありがと」
沈黙を破ったのはあたし。謝礼を聞いたバスターはにっこり笑う。この顔は好きだ。
「で・・・あたしの方はからっきしだったけど、あんたは?」
照れ隠しに話題を逸らしたのだけれど、これは案外功を奏し、彼はそうだったと掌を打ってからザックの口を開き、中を見せてくれた。缶詰の他、果物や野菜が増えている。新鮮な果物など久々にお目に掛かった。
「美味しそぉ」
「これは直ぐ腐ってしまうだろうから、今食べてしまおうか」
「賛成! あーっ美味しそう美味しそう!」
ボロボロの身体に染み透る水分と甘味。その味が妙に美味しく感じられた。
体力13→5/食糧23→26
アイテム:安全靴、バット/銀色の鍵(クリアフラグB)
※安全靴:【探索】時食糧減少を1点抑える(最低1)
※バット:【戦闘】時ダメージを1点軽減(最低1)
※ハーフゾンビ化(シェーラ):永久にゾンビ化しない、同行者を持てない
今日のシェーラ:【アクシデント】ゾンビを恐れるあまり、立て籠もって食糧を独り占めする男を説得できるか? 今が17時~深夜1時なら成功、食糧+5。それ以外なら銃で撃たれ7のダメージ!
(判定→成功)
今日のバスター:【戦闘】廃棄されたコンビニを探索、収穫はなく出ようとするがなぜか外が暗い・・・? いや違う、窓にべったりとゾンビたちが密着しているのだ! 9のダメージ! 食糧:-2
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