――疲れた。半分ゾンビ化しているこの身体なのに疲れるというのはお笑い種だが、事実疲れているから堪らない。狙われない為動き回り、動き回る為食糧を探して動き回り、疲れを癒す為に塒を求めて動き回る。どう足掻いても生き残る為には動き回らなくてはならない。
「ねえバスター、何かあった?」
隣室の相棒に問い掛けながらクローゼットを開ける。着る物か、若しくは隠された食糧でもあればめっけものだ。それが例えおやつでも。
が、見つかったのは予想外且つ望まぬモノだった。そいつは飛び出すや否や首目掛けてすっ飛んできたので避ける暇も無く。
「ちょっ・・・あんたはお呼びじゃないんだよ!」
噛みつかれた首に痛みを感じる。そこはまだ無事な部分らしい。ゾンビにとってはご馳走だろうが、喰わせるわけには当然いかない。
「邪魔ぁっ!」「シェーラ!」
あたしがゾンビを蹴り剥がすのとほぼ同時に、バスターが駆け込んできた。物音がしたからと言った彼はあたしの首を見て顔色を変え、クローゼットからタオルを拝借してそこに押し付けてきた・
「痛ったいんだけど・・・」
「出血が酷い、暫く動かない方が」
と、その時唐突に、家全体がズズンと揺れた。何か大きなものがぶつかったような衝撃。トラブルはトラブルを呼ぶらしい。
「若しかして、あたしが厄年かな
呟くあたしにバスターが笑う。力無く。けれども壁をぶち破って現れた新手の敵には、流石のあたし達も顎が外れたみたく大口を開けてしまった。
――でかい。明らかに人間のそれではない。縫合痕だらけの身体、ジャガイモみたいな頭、丸太のような腕。ヤバい。勝てるわけが無い。こんなモンスターみたいな奴、それこそ笑えるレベルでヤバい。逃げようとあたしが呼んだのに、バスターはそれを無視した。傍にあったコート掛けを(そんなもの爪楊枝より役に立たなそうなのに)手にして、大声を上げて隣の部屋へ駆けていく。
「ちょっと!」
「外へ逃げろ! おれは後から行く!」
後から? 馬鹿な!
急いで追い掛けようと立ち上がったはずのあたしの足は、くらりとまた膝を折ってしまう。――血が足りてない。
(だからあいつ、引き離そうと・・・)
しょうもない馬鹿だと床を殴りつけたかったが、生憎腕はタオルを押さえていて塞がっている。兎も角早く外へ離脱しなければ。あたしがここに居る限り、バスターはあの化け物を引きつけ続けるだろう。
フラフラとだが足は何とか地を踏んでくれた。走ることは出来ないからのったりとしたスピードで外を目指す。幸いにも化け物ゾンビが開けてくれた穴から外に出られる。外へ踏み出した途端、崩れるように身体が倒れた。舌打ちしながらタオルを振り捨てて起き上がる。その、上を。
「うおあぁぁっ!!」
人が宙を飛ぶシーンというものは、現実には滅多に見られないものだと思う。それも筋骨隆々の男がすっ飛んでいくシーンは。まるで映画のワンシーンのように吹っ飛ばされていったバスターは、向かいの家の壁にぶち当たって落ちた。
「バスター!」
「・・・平気だ、逃げよう、シェーラ」
平気だと言える勢いでは無かったように思うけれど、バスターは多少ふらついただけで起き上がる。こいつ、骨がチタニウムで出来てんじゃないだろうか。
伸ばした腕を掴み、あっさりとあたしを担ぎ上げると、ダメージなど感じさせない足取りで彼は駆け出した。後ろを向いているあたしの視界から、つぎはぎゾンビが小さくなって消えていく。
「・・・ゾンビって外科手術出来んのかな?」
問い掛けに言葉は返って来なかった。が、答は明白。出来るわけが無い。――ならば。
(誰かが裏で糸を――・・・)
体力44→27/食糧61→58
アイテム:安全靴、寝袋/銀色の鍵(フラグB)
今日のS:【戦闘】クローゼットからゾンビが現れ、至近距離でのとっくみあいに! 6のダメージ!(この戦闘では拳銃、ライフル、ショットガンの効果を受けられない) 食糧:-1
今日のB:【戦闘】全身がツギハギになった巨体のゾンビに遭遇! もしやゾンビを人為的に改造した者がいるのか? ともあれ戦わねば切り抜けられない! 11のダメージ! 食糧:-2
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