玩具の銃がホンモノなら良いのに。小さなぼやきを聞きつけたのか、バスターが「全くだ」と返すのが耳に入った。現在、背中合わせのあたし達はそれぞれ玩具のショットガンを構えてゾンビ共と応戦中だ。銃の使い道はただ一つ。撃つのではなく、
「でりゃあああっ!!」
――殴るのだ。
これは元々シューティングゲームに用いるはずの銃のレプリカで、そのゲームのジャンルはホラー。即ち、ゾンビシューティング。
「ほんと笑えない冗談よね!」
「本当に、せめて銃が本物なら・・・」
本物でも撃てない癖に。あたしが肘でどつくとバスターから苦笑が降る。こいつは牽制と陽動は出来るが、未だに攻撃に手が出せないのだ。今の応戦でも、あたしの背中を襲われないように牽制しているだけ。殴りつけは出来ても頭を潰したりは出来ない。専らゾンビの殲滅はあたしの役目。独学で乱雑に習っただけのにわか体術がこんな形で役に立つとは、世の中上手く出来ているものだと思う。
小一時間程経ったろうか。ゲームセンターで鉢合わせたゾンビの集団は一匹残らず片付いた。厳密に言えば全滅ではなく途中で何匹か逃げ出しているし、奴らが仲間を呼ばないとも限らないので移動は急ぐに超したことは無い。ぐったり疲れた身体を引き摺り、あたし達は街路を進んでいった。
そういえば――この騒動が起きてから大分経つ。隻腕同士の珍道中も二週間以上は経ったのだから様にもなっているだろう。その間に兎に角色々なことが起きた。生存者と行き会えたりした良い思い出もあれば、ゾンビ化するだの怪我をするだの、悪い思い出もある。それら全てを引っくるめ、何とか今を生きているのだ。
「・・・あんたさーぁ」
バスターに声を掛け・・・言葉を切った。不思議そうに首を傾げたバスターに何でも無いよと笑ってやる。
聞けるわけが無かった。「あんた、あたしが居なくなったらどうすんの?」なんて。この身体は、長くは保たない。持ち主だから分かる。じわじわと腐り落ちていくし、激しく動けば肉を失う。そして元には戻らない。自然治癒も無い。
(あたしが死んだら、こいつは・・・)
あ、と声が上がった。バスターの指が道の先を指す。大きなドラッグストア。しかし中を確かめたがろくなものは残っていなかった。
「シェーラ、奥に倉庫がある」
見れば確かに倉庫らしき扉があった。販売前の品物はこちらにストックしておくのだ。開けば多少の物資は手に入るだろう――が。
「・・・無理。あたし今日はちょっと、もう」
扉には錠とセキュリティロックが掛かっているようだった。錠を壊すのも一苦労。ロックが外れている保証も無い。何より、さっきの戦闘のダメージが酷い。壁に寄り掛かってずるずる座り込んだあたしの傍らに腰を下ろして、バスターがあたしの肩に手を掛ける。
「・・・食糧はまだある、大丈夫だ」
「・・・そうね」
(心配なのはそっちじゃないんだよバスター・・・あんたにどう伝えたら良いんだろう)
体力32→23/食糧54→50(安全靴効果)
アイテム:安全靴、寝袋/銀色の鍵(フラグB)
今日のS:【探索】食料庫発見! だが重い扉はひとりでは開きそうにない。【同行者】を連れているかフォロワーの助けを得られるなら食糧+7。さもなくば無駄骨に終わって食糧-3。
今日のバスター:【戦闘】ゲーセンでゾンビの集団と遭遇! 隣にゾンビゲーがあるのが悪い冗談のようだ! 9のダメージ! フォロワーの助けを得られるなら6のダメージ。 いずれにせよ食糧:-2
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