これは失策だった。猛スピードで瓦礫だらけの廊下を駆け抜けながら舌打ち――しようとしたが、口を開けると反動で舌を噛みそうになるので堪えた。角を曲がる。見つけたドアのノブを回すが動かない。蹴りつけても手応えが薄くて開く気配は無い。
「ボロボロの癖に、こういうとこだけ頑丈っ!」
悪態を吐いたあたしの腕を掴み、バスターが走り出した。左手に右手を引っ張られているのはやたら走り難く、振り解いて駆ける。
「一人で平気」
「ああ、知っている」
「・・・あいつら足は遅いけど、しつこいね」
先程曲がった角からぞろぞろとゾンビが溢れ出してきている。何を投げつけても追いかけてくるから堪ったものじゃない。
――待って。
コンクリの塊を振りかぶった手を、止めた。
嘘。脳味噌が否定を吐いた。けれど目が、理性が、「それ」を現実だと認めている。
ゾンビ共の戦闘で蠢いているあの物体。あれは・・・あれは、とても見覚えのある姿をしているのではないか?
「ロ、ビ、ン・・・?」
――姉さん、こっちは無事だよ、今のとこ。父さんと避難するから、この留守電聞いたら連絡して。
(うそ、うそよ、こないだまでちゃんとあいつ――)
口から飛び出しそうになる狼狽を噛み殺し、あたしは手の中の塊を握り締め直した。
(あたまを、ねらえば、××××。)
「シェーラ!」
急に視界が揺れた。バスターがあたしを抱えて走り出したのだと気づいた。制止する間ももがく暇も無く、彼は窓をぶち破って隣家の屋根へ転がり落ちる。
「馬鹿、戻って!」
「出来ない」
そう言ったこいつの頬に思い切り拳をぶち込んだ。バスターは何も言わずに血の混じった唾を吐き出し、あたしに視線を戻す。
「同情ならいらない!」
「違う」
バスターはそれっきり黙ってしまった。無言で道の先を指す。逃げようの合図だ。
あたし、分かっていた。今、弟を殺したらきっと壊れてしまうってこと。
バスター、あんた、あたしを護りたかったって言うの?
・・・まさかね。
体力90→80/食糧86→81
アイテム:治療薬、寝袋
今日のS:【戦闘】なんということだ・・・見知った顔がゾンビになっている! 戦って安らかな眠りを与えるなら8のダメージ。戦いを避けて逃げるなら6のダメージ。食糧:-2
今日のB:【戦闘】足の遅いゾンビが襲ってきた! だが、攻撃してもその歩みはなかなか止まらない! じわじわと追い詰められる! 4のダメージ! 食糧:-3
http://shindanmaker.com/235938
[0回]
PR