病院は嫌い。特に夜の病院は。リノリウムの床に蛍光灯の明かりが反射しているあの長い廊下も嫌いだし、ナースコールを次々取っては無表情で駆けていくナースも苦手だ。
病院に掛かったのは幼い頃、しかもあたしがでなく弟がだった。酷い熱を出した弟は脱水症状を起こして緊急で運ばれていってしまったのだ。見舞いに行ったけれど、あたしは真っ白いシーツの上にぽつんと寝かされている弟が、管塗れになって泣いている弟が、まるで改造されてしまうみたいで怖かった。
『お姉ちゃん、ぼくを独りにしないで』
「――ラ・・・シェーラ?」
「あっ、な、何?」
バスターの声で我に返った。そうだ、今は病院を探索中なのだった。シーツを取り上げたまま固まってしまっていたあたしを、バスターは心配げな顔で見てくる。そいつに何でもないと首を振った。
何でもないのは本当だ。ただ少し・・・昔を思い出しただけ。
と、ナースステーションから物音がした。あたしもバスターも咄嗟に身構える。・・・が、どうやらそれは人の話し声のようだった。片一方が引っ切り無しに喋り、もう一方がそれを宥めているような感じ。二人組の生存者か。
「・・・誰か居んの?」
あたしが声を掛け、バスターが二人の元へ赴く。こいつは容姿こそ威圧的だが、人当たりは良い。こんな姿のあたしが出ていくよりは良いだろう。二人組はステーションの奥、薬品棚の陰に居るらしい。そこへ屈み込んだバスターは、やがて立ち上がってあたしを呼んだ。話がついたらしい。
とは言え、あたしの姿を見た医者風の男は怯えた目をしていた。まあ仕方ないと思う。あたしでさえ、たまに鏡で自分を見るとビビるのだから。
「君は・・・本当にゾンビではないのか?」
「ゾンビだったら、こいつのこととっくに喰ってるよ」
そう言ってバスターを指差す。これは信憑性があるはずだ。案の定、男は多少肩の力を抜いた。聞けば彼らは暫くここに潜んでいるらしい。引っ切り無しに呟く白衣の男は、医者の同僚なのだそうだ。
白衣の男が呟く言葉は、ある一定の所で巻き戻ってしまう。壊れたテープレコーダーのようだ。今はiPodの時代だけれど。
「館って何のこと?」
尋ねるが反応は無い。医者にも見当がつかないのだと言う。同僚とは言っても、研究内容は全く別で、お互いに干渉し合ったことも無い、と。ということはお手上げだ。――が、やはり何か引っ掛かった。
例えば先日遭遇したつぎはぎのゾンビ。あれは確かに人造のものだった。裏で糸を引いている者が居てもおかしくは無い。
考え込むあたしに、医者が怖ず怖ずと声を掛けてきた。
「大変すまないのだが・・・食糧を少し、分けてくれないか? 勿論ただでとは言わない」
医者はぐるりと棚を見渡した。ここにあるものと交換、と言いたいのだろう。あたしは迷わず救急箱を手に取り、あたしの持っていたザックから食糧を渡してやった。
救急箱を選んだのは、バスターの為だ。あいつが怪我をした時の為。勿論、そんなこと一言も言わなかったけれど。
そんな思惑を知ってか知らずか(いやきっと知らないだろう)、バスターも肩から寝袋を下ろし、彼らに渡してやった。
「これも、良ければ」
お人よし、とあたしが小突くと彼はにこりと笑った。その顔は嫌いではないから、今回は不問にしてやろう。荷物を下ろして軽くなった身体は、これも悪くないと告げているようだった。
体力27→27/食糧52→39(安全靴効果、計-2)
アイテム:安全靴、救急箱/銀色の鍵(クリアフラグB)
※安全靴:【探索】時食糧減少を1点抑える(最低1)
※救急箱(使用者HP10回復/使い捨て)
※ハーフゾンビ化(シェーラ):永久にゾンビ化しない、同行者を持てない
◆アイテム超過→寝袋を捨てる
今日のシェーラ:【探索】元医者らしき生存者と遭遇。食糧10を渡せば治療薬(ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て)か救急箱(使用者のHPを10点回復。使い捨て)をくれる。食糧:-2
今日のバスター:【探索】うつろな目をした白衣姿の老人に遭遇。「すべては我々と“彼”の過ちだ……だが“アレ”がまだ、あの“館”に……」錯乱し会話にならない。館とは何だろう? 食糧:-3
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