コン、と小石を放る。あたしはさっきからそうして、手近にある何かを摘んでは放りを繰り返していた。
(眠れないもの)
目を閉じるのが恐いから。
弟は、あたしより三つ下だ。あちこちふらつく根無し草のあたしと違い、あいつはしっかり者で良い子。実家に残り、父親の世話をしながらデザイナーの仕事をやっている。時折街頭であいつの手掛けた広告を見たりすると、妙にくすぐったい気分になった。道行く奴を捕まえて、あれはあたしの弟が作ったんだと言いたくなった。
・・・ふと、弟のことを現在進行形で考えているのに気づいて舌打ちをする。馬鹿な姉だ。あの子はもう居ないのに。
(逃げたらいけなかったんだ。あいつを置いていっちゃった)
そう思ったけれど、あたしを逃がそうとしたバスターを恨む気にはなれなかった。きっと彼は恨んで良いと思っていることだろう。あいつは優しくて馬鹿なのだ。
キィ、と扉が軋んだ。一瞬緊張が走ったがすぐに収まる。バスターだ。
「合言葉言いなよ」
「あ、すまん、忘れていた」
ほら、やっぱり馬鹿なのだ。緊張して損をしたとふて腐れたあたしに、彼が手渡したのはカロリーメイトだった。
「ドラッグストアに残っていた。食べたら眠ろう」
「・・・そうね」
この辺りにゾンビの影は無かった。今まで追い回されっぱなしだったお陰でくたくたの身体は、眠りたくない気持ちに反して瞼を塞ぐ。それに今は、背中に一つ温もりがある。背中合わせに感じるバスターの体温が余計に眠りを誘った。
ゆるりと瞼が落ちた。
――姉さん!
夢が破裂した。一気に覚醒した身体が腐臭を嗅ぎ取る。唸り声と足音を聞き取る。
「バスター!」
飛び起きて彼を蹴り飛ばす。一瞬寝惚けた顔をしたこいつも、あたしと同じ異変にすぐ気づいた。がばっと身を起こし、ザックを引っ掴む。
「逃げよう」
「オッケー!」
この辺りは路地が入り組んでいる。逃げるのに最適だからと選んだ塒なのだ。追いつかれるはずが無い。
「とは言っても・・・囲まれる程寝入ってしまうとはな」
「仕方ないんじゃない? 最近ゾンビとエンカウントばっかだもん、疲れてんのよ」
確かに、と応えたバスターが笑っている。こんな状況で笑えるのが何だか幸せに感じた。
ざふん。
踏み込んだ足下で妙な音。そして浮遊感。
「へ?」
スローモーションで視界が下方へ平行移動していくのを理解出来ない。けれどそこからは速かった。――あたしは、下へ落ちたのだ。
体力80→70/食糧81→76
アイテム:治療薬、寝袋
今日のS:【ACD】まだ大丈夫、自分は運が良い・・・そんな余裕が命取り! 就寝中ゾンビの接近を許してしまう! HP90以上なら20(さもなくば10)のダメージ! 食糧:-2
今日のB:【ACD】狭く細い道を逃げる途中、仲間とはぐれる。今回と次回は、【同行者】の効果とフォロワーの助けを受けられない。なに、元々一人? ならば問題ない。食糧:-3
http://shindanmaker.com/235938
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