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夢を見ましょう

インクに浸したペン先で、そっと、静かに。

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ゾンビサバイバル #20

 食糧も大分少なくなったから補充しよう。そう決めてのろのろと探索に出た昼過ぎ。今日は妙に薄ら寒く、厭な日になりそうだと思ったのだが。
「厭な予感ほどっ、当たるってやつ、ね!」
 見事予感は的中。今日も楽しい追いかけっこの始まりだ。
 路地裏に転がったごみ箱を飛び越えたつもりが、足に引っ掛かってつんのめってしまう。そんなあたしの腕をあっさり引き上げ、平衡を取り戻させるバスター。しかし彼もまた、覇気の無い走りぶりだ。以前ならもっと身軽に動けた、と思う。こうなったのは身体が腐ったせいか、それとも疲労か。
(どっちもよ、どっちも)

 食糧庫の周りには人間が集まり易いと学んででもいたのか、はたまた何かの偶然か。中の食糧を確かめる暇も無く、あたし達に襲い掛かってきたのは大量のゾンビだった。餌の多い所には往々にして捕食者が集まるものだが、これは幾ら何でも多過ぎる。ずらりと幾重にも並んだゾンビの群れを前にしてあたし達二人はあっという間に逃げ出した。恐怖より先に苛立ちを覚えてしまう辺り、慣れとは怖いものだ。
「空が、飛べたら、良いのに!」
「それは・・・おれも、思う」
「そーら、を、じゆうに、とび、たい、なっ」
 何処で聞いたのだったか、確か日本のアニメで使われていた歌の一節を口ずさむ。バスターも聞いたことがあったらしく、一緒にハモってくれた。ゾンビから逃げながら歌をハモるなんて、こんな非日常歓迎し難くはあるけれど。

 商店街の中は意外に複雑な地形で迷い易い。けれども同時に、敵を撒き易いということでもある。看板を踏み倒して屋根に上がるは、店内を通り抜けて裏口から隣の通りに出るは、あたし達の逃走ぶりもちょっとしたものだろう。
 ――が。
「こいつらトランシーバーとか持ってないよねぇ?」
 行く先々、何処からとも無くゾンビが湧いて出るのだ。それこそ実は裏で徒党を組んでいるのかを疑いたくなる程、華麗に先回りをされる。
「若しくは本能的なテレパシーか」
「やだ、やめてよ・・・」
 そんなキングの携帯電話みたいな能力は要らない、とあたしは肩を落として屋根から下へ飛び降りた。張り出した天幕でバウンド、上手く玉石敷きの通りへ着地。10点ね、と自己採点する間にも続々とゾンビが集まってくる始末。少しくらい浸らせてくれても良いではないか。
「バスター早く!」
「分かった」
 同じく天幕を使い地面へ――こいつの場合は自重に負け、天幕を破り裂いて下のオレンジ箱に突っ込んだが、何とか着地を果たして駆け出した。
 今日はまだまだだ先が長い。


体力32→21/食糧36→34
アイテム:安全靴、治療薬/銀色の鍵(クリアフラグB)
※安全靴:【探索】時食糧減少を1点抑える(最低1)
※治療薬(ゾンビ化回復/使い捨て)
※ハーフゾンビ化(シェーラ):永久にゾンビ化しない、同行者を持てない

今日のシェーラ:【アクシデント】次々襲い来るゾンビに、逃げた先々で追われ続ける! 奴ら、共謀でもしているのかと思うほどだ。「現在HPの1割」点のHPを失う(端数切り捨て)。食糧:-2

今日のバスター:【アクシデント】食料庫発見、だが大量のゾンビがそばにいる! 今が12~23時なら抜け穴を発見し、食糧+5。それ以外ならゾンビに襲い掛かられ8のダメージ!
http://shindanmaker.com/23593

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ゾンビサバイバル #19

 軍の基地を見つけたと告げるとバスターは一瞬だけ厭な顔をした。そういえばこいつは元々軍人らしいと聞いている。体格が良いから分かるには分かるが、向いていないと思う。
「武器が見つかるかも知れないっしょ」
 正直それは建前だった。本当の所は、昨日行き会った白衣の男の言葉が気になっていたから。もしこの騒動に裏があるなら軍は怪しい。若しくは大企業か。恐怖のアンブレラ社みたいに。

 しかし、内部へ潜り込んだあたし達が出会った奴らは心底最悪な奴らだった――軍人のゾンビが武器を使えるなど聞いていない。資料室を漁っていたあたし達の前に現れたゾンビ共は揃って防弾チョッキを着、手に手に銃までも持っていたのだ。まさか撃てまいと楽観したのも束の間、一斉射撃を受けて跳び上がった。――勝てるわけがないだろ!
 入り口を固められたせいで袋の鼠。咄嗟に築いた本棚バリケードは脆い。キッチンよりマシだけどこんな場所でも死にたくない!とあたしが歯噛みした所に、急に天の助けが舞い降りた。

「こっちだ」

 頭上からの声、通気孔の蓋越しに男の姿が見えた。彼は手早く蓋を蹴り落としてあたしへ手を伸ばし、「掴まれ、早く」 ゾンビの仲間じゃないんだろう、とその男――深くキャスケットを被っていて何とも言えないが、多分あたしよりも若い――は付け加えてあたしを急かす。それでも躊躇ったのを見て、バスターがあたしを担ぎ上げてその手を掴ませた。
「大丈夫だ、シェーラ」
 ・・・時折、こいつのくれる言葉が酷く的確で、あたしは本当に苦しく、けれど救われる。
 黒髪の彼はさっとあたしを引き上げ、バスターも続いて上がってきた。ダクトは狭かったが何とか全員通れる太さだ。彼によればこのまま外へと出られるらしい。きっとこの男(少年かな)も何かしらを求めて基地へ入り込んだのだろう。

 けれども外へ出たあたし達を待っていたのは、さっきのとはまた別の(だと信じたい)ゾンビ集団で。三人はあっという間に散開してしまい、結局休む間も無く別れてしまった。
「・・・名前も聞けてないわ」
「礼だけは先に言っておいて良かった」
「次会えたら良いけど」
 奴らを撒き、ぐたりと地に崩れ落ちて。しかし何故だか良い気分ではあった。生存者と行き会うのはやはり楽しい。無事でいてくれることを願おう。
「昨日薬貰っといて良かったよねぇ」
 あたしの手には病院でバスターの為に手に入れた薬。二人とも軍人ゾンビに弾を喰らって傷を負っていた。バスターは肩と腹に掠り傷。風穴が開かなくて良かったと思う。こっちは腹に一発喰らっていたけれど、そこからは腐った体液が零れただけで痛みも無かった。
(あたしは、どんどん腐っていく)
 パン、とガーゼを叩き立ち上がる。痛いとバスターが肩を跳ねさせたのを笑った。腐敗する思考を拭い去るには、笑いが一番だから。

 結局、日暮れまであちこち回ったけれど食糧は見当たらなかった。代わりに研究所で治療薬を見つけたが、これは腹の足しにはならない。寝床にした研究所の屋根の上、変わらない星空に薬を翳す。疑惑は生まれるが形になるまでの根拠を持たない。
 ――あたし達は、元の生活になんか戻れるのだろうか。


体力27→32(a_suka09の助け/敬称略)/食糧39→36(安全靴効果)
アイテム:安全靴、治療薬/銀色の鍵(クリアフラグB)
※安全靴:【探索】時食糧減少を1点抑える(最低1)
※治療薬(ゾンビ化回復/使い捨て)
※ハーフゾンビ化(シェーラ):永久にゾンビ化しない、同行者を持てない

◆アイテム超過→救急箱を使い、治療薬を得る

今日のシェーラ:【戦闘】軍事基地でゾンビの集団と遭遇! 元軍人なのか装備が硬い! 10のダメージ! フォロワーの助けを得られるなら5のダメージ。いずれにせよ食糧:-2

今日のバスター:【探索】廃棄された研究所を探索。治療薬(ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て)を得た! ゾンビ発生をあらかじめ予期していたのだろうか、それとも・・・。 食糧:-2
http://shindanmaker.com/235938

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ゾンビサバイバル #18

 病院は嫌い。特に夜の病院は。リノリウムの床に蛍光灯の明かりが反射しているあの長い廊下も嫌いだし、ナースコールを次々取っては無表情で駆けていくナースも苦手だ。
 病院に掛かったのは幼い頃、しかもあたしがでなく弟がだった。酷い熱を出した弟は脱水症状を起こして緊急で運ばれていってしまったのだ。見舞いに行ったけれど、あたしは真っ白いシーツの上にぽつんと寝かされている弟が、管塗れになって泣いている弟が、まるで改造されてしまうみたいで怖かった。
『お姉ちゃん、ぼくを独りにしないで』

「――ラ・・・シェーラ?」
「あっ、な、何?」
 バスターの声で我に返った。そうだ、今は病院を探索中なのだった。シーツを取り上げたまま固まってしまっていたあたしを、バスターは心配げな顔で見てくる。そいつに何でもないと首を振った。
 何でもないのは本当だ。ただ少し・・・昔を思い出しただけ。
 と、ナースステーションから物音がした。あたしもバスターも咄嗟に身構える。・・・が、どうやらそれは人の話し声のようだった。片一方が引っ切り無しに喋り、もう一方がそれを宥めているような感じ。二人組の生存者か。

「・・・誰か居んの?」
 あたしが声を掛け、バスターが二人の元へ赴く。こいつは容姿こそ威圧的だが、人当たりは良い。こんな姿のあたしが出ていくよりは良いだろう。二人組はステーションの奥、薬品棚の陰に居るらしい。そこへ屈み込んだバスターは、やがて立ち上がってあたしを呼んだ。話がついたらしい。
 とは言え、あたしの姿を見た医者風の男は怯えた目をしていた。まあ仕方ないと思う。あたしでさえ、たまに鏡で自分を見るとビビるのだから。
「君は・・・本当にゾンビではないのか?」
「ゾンビだったら、こいつのこととっくに喰ってるよ」
 そう言ってバスターを指差す。これは信憑性があるはずだ。案の定、男は多少肩の力を抜いた。聞けば彼らは暫くここに潜んでいるらしい。引っ切り無しに呟く白衣の男は、医者の同僚なのだそうだ。
 白衣の男が呟く言葉は、ある一定の所で巻き戻ってしまう。壊れたテープレコーダーのようだ。今はiPodの時代だけれど。
「館って何のこと?」
 尋ねるが反応は無い。医者にも見当がつかないのだと言う。同僚とは言っても、研究内容は全く別で、お互いに干渉し合ったことも無い、と。ということはお手上げだ。――が、やはり何か引っ掛かった。
 例えば先日遭遇したつぎはぎのゾンビ。あれは確かに人造のものだった。裏で糸を引いている者が居てもおかしくは無い。

 考え込むあたしに、医者が怖ず怖ずと声を掛けてきた。
「大変すまないのだが・・・食糧を少し、分けてくれないか? 勿論ただでとは言わない」
 医者はぐるりと棚を見渡した。ここにあるものと交換、と言いたいのだろう。あたしは迷わず救急箱を手に取り、あたしの持っていたザックから食糧を渡してやった。
 救急箱を選んだのは、バスターの為だ。あいつが怪我をした時の為。勿論、そんなこと一言も言わなかったけれど。
 そんな思惑を知ってか知らずか(いやきっと知らないだろう)、バスターも肩から寝袋を下ろし、彼らに渡してやった。
「これも、良ければ」
 お人よし、とあたしが小突くと彼はにこりと笑った。その顔は嫌いではないから、今回は不問にしてやろう。荷物を下ろして軽くなった身体は、これも悪くないと告げているようだった。


体力27→27/食糧52→39(安全靴効果、計-2)
アイテム:安全靴、救急箱/銀色の鍵(クリアフラグB)
※安全靴:【探索】時食糧減少を1点抑える(最低1)
※救急箱(使用者HP10回復/使い捨て)
※ハーフゾンビ化(シェーラ):永久にゾンビ化しない、同行者を持てない

◆アイテム超過→寝袋を捨てる

今日のシェーラ:【探索】元医者らしき生存者と遭遇。食糧10を渡せば治療薬(ゾンビ化しつつある者を元に戻す。使い捨て)か救急箱(使用者のHPを10点回復。使い捨て)をくれる。食糧:-2

今日のバスター:【探索】うつろな目をした白衣姿の老人に遭遇。「すべては我々と“彼”の過ちだ……だが“アレ”がまだ、あの“館”に……」錯乱し会話にならない。館とは何だろう? 食糧:-3
http://shindanmaker.com/235938

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ゾンサバ #17

 街路に死体が多くなった。生存者は皆隠れながら生き延びている所為で中々行き会わないから、必然的に死体との遭遇率が高くなるだけだと思いたい。とある家へ潜ったあたしの足元に転がる死体二つを見下ろして、溜息を零した。以前見たものよりも凄惨な死に様。銃で一発なら未だしも、調理器具でやり合うなんて最悪だ。
 そして何より、もう死体如きでは何も感じない自分が空恐ろしい。感情の欠落はゾンビ化の所為ではなく、疲労によるものだ。
(つまり、人間誰でもこうなるってこと)
 ずるり、ずるりと引き摺られる腐肉を片足で踏みつけて引き千切る。多少の食糧を得たお陰で心は軽いが、こういう喪失には一抹の自嘲を禁じ得ない。骨が露出した右脚を、可哀相だと嘆くのはあたしではなくバスターの方。きっと更に酷くなった損壊を見て、あいつは哀しい顔をするだろう。

 予め決めておいた合流ポイントにはもうバスターが待っていた。表情が明るい。その表情が曇る前に、あたしはさっさと問い掛ける。
「何か見っけた?」
「ああ・・・広い公園を。随分綺麗なんだ」
 ――確かに、彼の見つけてきた公園は広く、綺麗だった。池にはまだ魚と鴨が生き残っていたし、芝生は青々としていて外の荒涼たる惨状が嘘のようだ。ごろりと寝転び、空を見上げる。
「・・・ピクニック来たいよねえ、こーゆートコ」
「サンドイッチとコーヒーを持って」
「そうそう」
 あはは、と笑いが零れた。希望はあくまで希望であり、現実ではない。あたし達がしがみついて離さない希望は風前の灯である。終わりの無い悪夢を前に人は膝を折る。ゴールが見えないのに走り続けることは出来ないのだ。
 けれど、今日は何故か素直に未来を思い描けた。そうだ、バスターとここへ来よう。サンドイッチとコーヒーを持って。
 いつか、この世界が元通りになったら。


体力23→27(寝袋効果)/食糧50→52
アイテム:安全靴、寝袋/銀色の鍵(フラグB)

今日のS:【探索】食糧のそばに男女の死体を発見。食べ物を巡ってお互い争い合ったようだ・・・自分もこうなるのだろうか。食糧:+4

今日のB:【休息】ゾンビの気配がない公園を見つけ、野営する。こんな時でも星は綺麗だ・・・。HP:+3 食糧:-2
http://shindanmaker.com/235938

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ゾンサバ #16

 玩具の銃がホンモノなら良いのに。小さなぼやきを聞きつけたのか、バスターが「全くだ」と返すのが耳に入った。現在、背中合わせのあたし達はそれぞれ玩具のショットガンを構えてゾンビ共と応戦中だ。銃の使い道はただ一つ。撃つのではなく、
「でりゃあああっ!!」
 ――殴るのだ。
 これは元々シューティングゲームに用いるはずの銃のレプリカで、そのゲームのジャンルはホラー。即ち、ゾンビシューティング。
「ほんと笑えない冗談よね!」
「本当に、せめて銃が本物なら・・・」
 本物でも撃てない癖に。あたしが肘でどつくとバスターから苦笑が降る。こいつは牽制と陽動は出来るが、未だに攻撃に手が出せないのだ。今の応戦でも、あたしの背中を襲われないように牽制しているだけ。殴りつけは出来ても頭を潰したりは出来ない。専らゾンビの殲滅はあたしの役目。独学で乱雑に習っただけのにわか体術がこんな形で役に立つとは、世の中上手く出来ているものだと思う。

 小一時間程経ったろうか。ゲームセンターで鉢合わせたゾンビの集団は一匹残らず片付いた。厳密に言えば全滅ではなく途中で何匹か逃げ出しているし、奴らが仲間を呼ばないとも限らないので移動は急ぐに超したことは無い。ぐったり疲れた身体を引き摺り、あたし達は街路を進んでいった。
 そういえば――この騒動が起きてから大分経つ。隻腕同士の珍道中も二週間以上は経ったのだから様にもなっているだろう。その間に兎に角色々なことが起きた。生存者と行き会えたりした良い思い出もあれば、ゾンビ化するだの怪我をするだの、悪い思い出もある。それら全てを引っくるめ、何とか今を生きているのだ。
「・・・あんたさーぁ」
 バスターに声を掛け・・・言葉を切った。不思議そうに首を傾げたバスターに何でも無いよと笑ってやる。
 聞けるわけが無かった。「あんた、あたしが居なくなったらどうすんの?」なんて。この身体は、長くは保たない。持ち主だから分かる。じわじわと腐り落ちていくし、激しく動けば肉を失う。そして元には戻らない。自然治癒も無い。
(あたしが死んだら、こいつは・・・)

 あ、と声が上がった。バスターの指が道の先を指す。大きなドラッグストア。しかし中を確かめたがろくなものは残っていなかった。
「シェーラ、奥に倉庫がある」
 見れば確かに倉庫らしき扉があった。販売前の品物はこちらにストックしておくのだ。開けば多少の物資は手に入るだろう――が。
「・・・無理。あたし今日はちょっと、もう」
 扉には錠とセキュリティロックが掛かっているようだった。錠を壊すのも一苦労。ロックが外れている保証も無い。何より、さっきの戦闘のダメージが酷い。壁に寄り掛かってずるずる座り込んだあたしの傍らに腰を下ろして、バスターがあたしの肩に手を掛ける。
「・・・食糧はまだある、大丈夫だ」
「・・・そうね」

(心配なのはそっちじゃないんだよバスター・・・あんたにどう伝えたら良いんだろう)


体力32→23/食糧54→50(安全靴効果)
アイテム:安全靴、寝袋/銀色の鍵(フラグB)

今日のS:【探索】食料庫発見! だが重い扉はひとりでは開きそうにない。【同行者】を連れているかフォロワーの助けを得られるなら食糧+7。さもなくば無駄骨に終わって食糧-3。

今日のバスター:【戦闘】ゲーセンでゾンビの集団と遭遇! 隣にゾンビゲーがあるのが悪い冗談のようだ! 9のダメージ! フォロワーの助けを得られるなら6のダメージ。 いずれにせよ食糧:-2
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ゾンサバ #15

「シェーラ、ここで待っていろ」
 ――つぎはぎゾンビから逃げ出して間も無く、担いでいたあたしを下ろしたバスターはそう託けて行ってしまった。これは多分、壊れた地下鉄の車両なのだと思う。地上に出た所で襲われ、横転したのだろう。地下だからと言って安全ではないが、若しもずっと地下に居られたらこんな騒動に巻き込まれずに済んだのだろうか。
「馬っ鹿馬鹿しー・・・」
 この世界、既に何処も安全ではないはずだ。女子供も戦う術の無い者も皆巻き込まれている。唯一空だけが安全な場所だろう。車両が横転している所為で、今あたしが横になっているのは長椅子の背凭れだ。硝子片はバスターが払っていってくれたので、思いの外快適である。
 そして、寝転がった真上の窓から空が見えた。切り取られた四角い、連続した空を時々鳥が横切っていく。あいつらは呑気で良いなぁと思うけれど、こんな世の中じゃ餌を取るのも一苦労だろうから結局人も鳥も変わらず世知辛い。

 首の出血は大分収まってきたらしい。痛みも抜けてきた。こんなことならバスターについて行けば良かったと、独りなのを良いことにわざとらしく唇を尖らせてみる。ここの所あたしはあいつに護られてばかりではないか。
(不満っちゃ不満よねえ)
 そもそも大の男一人を護ろうというのが無理な話かも知れないが。それもこんなトンチキな世界で。それでも、そうして護り抜く度に自分が強くなれる気がしていて好きだった。要は自己満足とも言える。相手がバスターで無くとも、あたしはそうしていただろう。
 けれど、少しは。少しは、あいつだからという部分が、今は。

「シェーラ」「わっはい!!」
 ひょっこり視界に飛び込んできたバスターに名前を呼ばれて、素っ頓狂な声が出てしまった。急に呼ぶなと怒鳴ると相変わらず情けない顔で笑う。
「あまり大声で呼んだら不味いと思ってな」
「そりゃ・・・そうだけど」
 だからって、と言い掛けて止めた。今回はあたしが悪い。非を認められない程子供じみてはいないつもりだから、素直にごめんよと謝った。
「でも吃驚した」
 まあ、噛みつくのは忘れないけれど。不貞た子供を宥めるようなあいつの顔が余計癇に障ったものだから、隣に腰を下ろしたあいつを蹴りつけてやった。
「痛い・・・」
「知ってる。・・・で? 何か見つけた?」
「鍵を見つけた。シェルターの」
 そこで言葉を切った彼の顔を見上げる。
「・・・置いてきた」
「・・・上出来」
 拠点は要らないと言ったあたしの言葉を覚えていたのだろう。あたしがにっと笑う顔に釣られてか、バスターも珍しく悪戯っ子みたいな笑顔を見せた。ザックを担ぎ直して立ち上がる。バスターは寝袋と食糧袋。多少の食糧を、今は二人で分けて持っている。以前マンホール事件で分断された際、片方だけに食糧を担わせると危険だと分かったからだ。
「さーて、行こっかぁ」
 桃源郷でも探しにさあ。あたしが言うとバスターがぷっと噴き出した。そんな場所があるとは思えないが、少しくらい希望を添えても良いじゃないか。殊更良い物件が見つからなければ、今日の桃源郷はこの電車になりそうだけれど。


体力27→32(寝袋効果)/食糧58→54
アイテム:安全靴、寝袋/銀色の鍵(フラグB)
◆超過→シェルターの鍵を捨てる

今日のS:【休息】横転し廃棄された無人の電車が今日の寝床だ。傾いた座席で眠る・・・意外と悪くない寝心地だった。HP:+4 食糧:-2

今日のB:【拠点】金持ちらしき死体の上着から、無人のシェルターの鍵(アイテム扱い。以降【休息】が出るたび、その内容を「HP:+1 食糧:-2」に変更してもよい)を発見! 食糧:-2
http://shindanmaker.com/235938

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ゾンサバ #14

 ――疲れた。半分ゾンビ化しているこの身体なのに疲れるというのはお笑い種だが、事実疲れているから堪らない。狙われない為動き回り、動き回る為食糧を探して動き回り、疲れを癒す為に塒を求めて動き回る。どう足掻いても生き残る為には動き回らなくてはならない。
「ねえバスター、何かあった?」
 隣室の相棒に問い掛けながらクローゼットを開ける。着る物か、若しくは隠された食糧でもあればめっけものだ。それが例えおやつでも。
 が、見つかったのは予想外且つ望まぬモノだった。そいつは飛び出すや否や首目掛けてすっ飛んできたので避ける暇も無く。
「ちょっ・・・あんたはお呼びじゃないんだよ!」
 噛みつかれた首に痛みを感じる。そこはまだ無事な部分らしい。ゾンビにとってはご馳走だろうが、喰わせるわけには当然いかない。
「邪魔ぁっ!」「シェーラ!」
 あたしがゾンビを蹴り剥がすのとほぼ同時に、バスターが駆け込んできた。物音がしたからと言った彼はあたしの首を見て顔色を変え、クローゼットからタオルを拝借してそこに押し付けてきた・
「痛ったいんだけど・・・」
「出血が酷い、暫く動かない方が」

 と、その時唐突に、家全体がズズンと揺れた。何か大きなものがぶつかったような衝撃。トラブルはトラブルを呼ぶらしい。
「若しかして、あたしが厄年かな
 呟くあたしにバスターが笑う。力無く。けれども壁をぶち破って現れた新手の敵には、流石のあたし達も顎が外れたみたく大口を開けてしまった。
 ――でかい。明らかに人間のそれではない。縫合痕だらけの身体、ジャガイモみたいな頭、丸太のような腕。ヤバい。勝てるわけが無い。こんなモンスターみたいな奴、それこそ笑えるレベルでヤバい。逃げようとあたしが呼んだのに、バスターはそれを無視した。傍にあったコート掛けを(そんなもの爪楊枝より役に立たなそうなのに)手にして、大声を上げて隣の部屋へ駆けていく。
「ちょっと!」
「外へ逃げろ! おれは後から行く!」
 後から? 馬鹿な!
 急いで追い掛けようと立ち上がったはずのあたしの足は、くらりとまた膝を折ってしまう。――血が足りてない。
(だからあいつ、引き離そうと・・・)
 しょうもない馬鹿だと床を殴りつけたかったが、生憎腕はタオルを押さえていて塞がっている。兎も角早く外へ離脱しなければ。あたしがここに居る限り、バスターはあの化け物を引きつけ続けるだろう。
 フラフラとだが足は何とか地を踏んでくれた。走ることは出来ないからのったりとしたスピードで外を目指す。幸いにも化け物ゾンビが開けてくれた穴から外に出られる。外へ踏み出した途端、崩れるように身体が倒れた。舌打ちしながらタオルを振り捨てて起き上がる。その、上を。

「うおあぁぁっ!!」

 人が宙を飛ぶシーンというものは、現実には滅多に見られないものだと思う。それも筋骨隆々の男がすっ飛んでいくシーンは。まるで映画のワンシーンのように吹っ飛ばされていったバスターは、向かいの家の壁にぶち当たって落ちた。
「バスター!」
「・・・平気だ、逃げよう、シェーラ」
 平気だと言える勢いでは無かったように思うけれど、バスターは多少ふらついただけで起き上がる。こいつ、骨がチタニウムで出来てんじゃないだろうか。
 伸ばした腕を掴み、あっさりとあたしを担ぎ上げると、ダメージなど感じさせない足取りで彼は駆け出した。後ろを向いているあたしの視界から、つぎはぎゾンビが小さくなって消えていく。
「・・・ゾンビって外科手術出来んのかな?」
 問い掛けに言葉は返って来なかった。が、答は明白。出来るわけが無い。――ならば。
(誰かが裏で糸を――・・・)


体力44→27/食糧61→58
アイテム:安全靴、寝袋/銀色の鍵(フラグB)

今日のS:【戦闘】クローゼットからゾンビが現れ、至近距離でのとっくみあいに! 6のダメージ!(この戦闘では拳銃、ライフル、ショットガンの効果を受けられない) 食糧:-1

今日のB:【戦闘】全身がツギハギになった巨体のゾンビに遭遇! もしやゾンビを人為的に改造した者がいるのか? ともあれ戦わねば切り抜けられない! 11のダメージ! 食糧:-2
http://shindanmaker.com/235938

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ゾンサバ #13

「バスター、あんた厄年だったりしない?」
 思わず恨み言めいた冗談を言いたくなるくらい、今の状況は笑えないものだった。一夜の宿としていた家にゾンビが押し入ってきたのだ。夜のことだったし気づくのが遅れた。そしてこの様――出口を塞がれ、カビだらけのキッチンに追い詰められている今に到る。
「マジどうすんのこれ」
「どうすべきかな」
「生きて出られる方法考えてよ」
 軽口の応酬になってしまうのは実は焦っている証拠だ。逃走生活も大分長い。体力馬鹿のバスターまで疲労の色を濃くしている。あたしが「こんな姿」になったことも、若しかすると影響しているのかも知れない。気にしていない素振りだが、気にならないわけがないから。

 わっとゾンビ共が一斉に飛び掛かってきた。下がるにもそこは壁で、万事休すかと思われた――が。

「ハチャァ!」

 奇妙な、けれども覇気の篭った掛け声と共に後続のゾンビが何体か吹っ飛ぶのが見えた。掛かってくるゾンビと応戦しながら目を凝らす。戦っているのは――、
「は・・・神父?」
「今の内に突破するのだ! 早くこちらへ!」
 言われるまま、あたし達は数の減ったゾンビの群れへ突っ込む。転んだ奴を踏み越えるようにすると案外さくさく向こう側へ進めた。ちらりと確認しただけだが、バスターも遅れてはいない。

 群れから飛び出しリビングへ転がり出る。当然追ってくるゾンビ共とあたし達の間に立ち塞がったのは、黒い司教服を着た老僧だ。彼の妙ちきりんな動きをあたしは知っている。カンフーというやつだ。独学で色々な体術を覚えている時期に見た覚えがある。
「あの、あなたは」
「自己紹介は後だ、お逃げなさい君達。ここは私に任せて、さあ!」
「ヒュー、カッコイイ、映画みたい」
 立ち上がり神父の隣を陣取ると、あたしは手近にあった椅子を引き寄せた。
「あたしもチャーリーズエンジェルに憧れてんのよねえ!」

 ――二人掛かりで群れは何とか撃退出来た。暗がりの中で戦うこと程やり辛いことは無い。何度かゾンビと間違えて相手を狙いそうになってしまった。どっかと床に座り込んだあたし達の傍へ、バスターが駆け寄ってくる。
「大丈夫ですか」
「ああ勿論。こちらのエンジェルがお強いものだから」
「やーねぇ、そっちのカンフーも凄かったじゃない」
 いやいや、と首を振る神父は満更でも無さそうである。恐らく自信があるのだろう。こんな老人が一人で居るのも、その自信が後ろ盾だからに違いない。
「神父様はどうしてここに?」
「ゾンビがここに入っていくのを見て、暫く様子を見ていたら話し声がしたものだからね」
 応戦しにきたのだと言う。全くありがたい限りだった。キッチンでゾンビに喰われるなど洒落にもならない。
「しかし・・・」
 バスターをしげしげと眺め回した神父は首を傾げ、
「君は見掛けの割に繊細なのかな?」
 聞かれたそいつが困り顔をしたので、返答はあたしが引き継ぐ。
「そいつ戦えないのよ」
「ほほう?」
「だから代わりにあたしがね」
「成る程強いわけだ。君が彼の守護天使なのだね」
 笑んだ神父に何も答えず肩を竦める。それを彼は照れと取ったようだった。

 しかしだね、と神父は更に言葉を続け――そこで一度唾を飲んで間を溜めた。
「実質一人で戦い続けるのは大変だろう。私は手隙だから、良ければ」
「ああ、あの、良いの。・・・連れを増やせない理由があってね」
 首を振るあたしを訝しげな視線で神父が見る。これは百聞は一見に如かずだろう。リビングの壁を蹴り破り、月光を浴びる。暗闇に慣れた目ならばあたしの現状を見るに十分事足りるはずだ。
 案の定、神父は息を呑んだ。
「・・・ね?」
「君は・・・そうか、そういうことかね」
 驚きに声を震わせたものの、神父はそれ以上何も言わなかった。けれどその代わり、あたしへ祈りを捧げてくれた。手助けの礼と祈りの礼、それと健闘を称え合い別れる。その際、神父がバスターに何か耳打ちをしていた。そしてあたしが幾らそれを尋ねても、こいつは絶対に教えてはくれなかった。


体力52→44/食糧63→61
アイテム:安全靴、寝袋/銀色の鍵(フラグB)
◆同行者は持てない→神父を置いていく

今日のS:【同行者】カンフーの達人な神父(アイテム扱い。3回まで【戦闘】で受けるダメージを0にできるが、連れている間毎日食糧1)が同行を申し出た。連れて行くかは好きにせよ。

今日のB:【戦闘】廃屋の中でゾンビの集団と遭遇! 出口をふさがれた! 8のダメージ!! フォロワーの助けを得られるなら5のダメージ!。 食糧:-2
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ゾンサバ #12

 無人の消防署というのは不思議な感じがするものだ。いつも人の溢れた場所というわけでもないのに、いざ本当に無人になってしまうと静か過ぎる。何処で火事が起ころうとももう光らないであろう赤色灯を見上げていたあたしに、バスターが声を掛けた。
「シェーラ、こんなものがあったぞ」
 片手に振っているのは信号弾のようだ。助けを呼ぶ時に打ち上げるアレである。
「・・・置いてって良いんじゃない? あたし達以外に、ソレが必要な奴は沢山居るでしょ」
 この生活の中で他人の命を気に掛けている場合ではない。が、あたしにしてもこいつにしても、少なくとも子供の命を踏み台にしてまで生きたいとは思わなかった。この支えの無い生活の中で、信号弾は若い心には心強い助けになるだろう。
「分かった・・・戻しておく」
「分かりやすい所にね」
 あたしがそう言うとバスターが笑った。

 その、帰り道。
「ほんっと最近ツイてないよねぇ、あたし達・・・!」
 狭い路地を選んだのは人目に触れず、安全に進めると踏んだから。ここの所のあたしの勘は全部空振りばかりで厭になる。しかも一体二体ではなく団体で来るのだから余計始末に負えない。逃げ続けの毎日に疲弊した足がふらつき、それに気づいたバスターが手を差し出したが、
「馬鹿、ンなことしたらあんた、荷物落とすでしょ!」
 パシンと弾き、体勢を立て直して走る。大事な食糧を落とされるのも困る。それに、この手を引かれることに抵抗もあった。
(あんたの手が汚れるもんね)

 ふと、微かにバスターのスピードが落ちた。
「シェーラ・・・・・・まずいぞ」
 走っている所為だけでない、切羽詰まった声音に不安感。一番嫌な予想を抱いて大柄な身体の向こう側、進行方向の先を覗く。
 ――行き止まりだ。
「あーもう・・・!」
 最悪! 毒づくあたしを宥める声は無い。そんな余裕も無いのだ。行き止まりとは言えそこはフェンスで阻まれているに過ぎない。だがここで足止めを喰っている間にゾンビ共は追いついてくるだろう。どちらかは確実に奴らに襲われる。
「バスター、先に昇んな!」
 選択の余地など無かった。反論しようとしたそいつの尻を蹴っ飛ばす。
「あたしの力じゃあんたを引き上げらんないでしょ! 先にあんたが昇って、それからあたしを引き上げな!」
 ――それは半分本音で半分嘘。確かにあたしではこいつを引き上げられないけれど、理由はそれだけではない。今でもあたしは、精一杯こいつを護ろうと思っているのだ。
 迫るゾンビの集団。バスターがフェンスに手を掛けたのを知ってか咆哮を上げる。
「くっさい息混じらせないでよ、空気が腐るッ!」
 身体をバネのようにして先頭のゾンビへ蹴りをお見舞いしてやった。狭い道はあたし達にも不利だったが、応戦するのにはうってつけだ。先頭を牽制してやるだけで十分足止めになる。
 しかしゾンビ共も黙ってやられてはくれない。蹴った足に纏わりつき、そこへ大口を開けて噛みついてくる。半分腐った肉に痛みは無いが、まだ無事な肉が痛い。勿論傷から血が溢れてもくる。
(あー、まだ生きてるって感じ)
 死にそうな時に面白いことを思うものだ。そんな笑いが込み上げかけた時、天からあたしを呼ぶ声が。

「シェーラ、掴まれ!!」

 仰げばバスターの手が伸びていた。足を齧る連中を毟り取り、フェンスを蹴って飛んだ。一本しか無いあたしの腕は、一本限りのバスターの手をしっかと握り締めた。
 その時引き上げられる感覚は、まるで飛んでいるかのようで。こんな風に思えるのなら手を取られるのも悪くはないと、思ったのだ。


体力61→52/食糧67→63(安全靴で-5→-4)
アイテム:安全靴、寝袋/銀色の鍵(フラグB)
◆超過→救難信号弾を捨てる

今日のS:【戦闘】狭い通路でソゾンビの集団と遭遇! 単独突破は難しい! 9のダメージ! フォロワーの助けを得られるなら6のダメージ。 食糧:-2

今日のB:【探索】消防署跡で、救難信号弾(使い捨て。これを使用したとツイートし、24時間以内にフォロワーーの助けを得られれば最新の診断結果を無効化できる)を発見! 食糧:-3
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ゾンサバ #11

「な、い、わ、・・・ッマジ最悪!」
 走る度ずくずくと弛む足の腐肉に不快さを感じながら、弾む息の合間に悪口を吐き捨てる。バスターがあたしを振り返るが拒むよう首を振った。こいつはあたしを担いで走ると言ったけれど、馬鹿を言わないでほしい。あたしが触れたらあんたの服は腐肉でドロドロになるのだ。洗濯する水と場所がどこにある。
 床に空いた穴を大きく跳躍。バランスを崩しかけたあたしを、バスターの左手が掴み引き上げていく。サッと肩からずり落ちかけたザックを戻し、次の角目掛けて走る、走る。静かなショッピングモールだったから何も居ないと踏んだのに、当てが外れてしまった。モールにゾンビというのは一種の定石なのだろうか。他の場所でも遭遇した話をちらほらと聞くが。

 漸くモールの端が見えてきた。大型モールの端から端までの疾走など、もう二度とやりたくない。
「てか、ウィンドウショッピングくらいさせなよっつーの・・・!」
「同感だ・・・」
 ぼやきに呟きの返答。思わず笑ってしまって息が苦しくなる。お互い次はどうするかなど分かっているから、特に声を掛け合うことも無く、そのまま勢い任せに閉じられた硝子ドアへと突っ込んでいった。
 一足先にバスターが、続いてあたしが飛び込んだお陰で、硝子の被害はさして被らずに済んだ。彼の切り傷は心配だが・・・あたしが硝子に直撃した場合、身体が保つのかという心配があったので今回ばかりは仕方無い。間髪入れずにまた走り出し、広い駐車場を飛び出した頃にはもう追っ手の姿は完全に見えなくなっていた。
「あーっ・・・体力使ったわ」
「ああも数が多いと流石に・・・うん?」
 身体を折り、ぜえぜえ息を整えるあたしの隣で、同じく肩で息をしていたバスターの言葉が途切れた。見れば何かを探すように背を伸ばしている。
 直ぐ、何を探しているかは分かった。――声がする。
「あっちね」
「うむ」

 近づく程にそれは人の声に聞こえてくる。騒ぎ立てる声と、もう一つは慌てたような声。騒ぐ声が大き過ぎて良く聞き取れない。

 ――くすりをよこせえ! たすけてくれえ、くすり、くすり、あんなやつらになるのはいやだぁあ!
 ――そ、そそそそそんなものないですよ!? た、たすけられません・・・!

 見つけた。フェンス際に追い詰められた少女らしき人影と、今にも掴み掛かろうとしている男。男の方はどうやらあたしと似たような状況らしい。尤も、あの男はもう直ぐ自我も何も無くしてしまうのだろう。
 あたし達の手元には以前見つけた薬がある。もう片足をゾンビに突っ込んだあたしには無用の長物だが、バスターには必要な代物だ。だから一応、彼へ目配せをしてみる。それに気づいたバスターは、優しく微笑して頷いた。
「そうよね、あんたはそう言うと思ったわ。――ちょっとお嬢、これ受け取んな!」
 あたしが投げ渡した薬を危うく取り損ねそうになりながらも、最終的に彼女はその両手にしっかと握り締めた。
「こ、これ、はいっ! どうぞ!」
 唐突で訳が分からないなりに、あたし達の意図する所は伝わったようだ。慌てて迫る男へ薬を突き出すように渡す。ぽかんとした顔をした後、男は恐る恐るそれを受け取り、そして崩れかけの顔を歪ませた。
「ああ、りが、とう」
 多分それは、笑みではなくて泣き顔だったのだと思う。

 ――大変な目に遭ったねえ、とあたしが言った時、少女は苦笑を浮かべて首を振った。人助けが出来たのは嬉しい、ということだろうか。まだティーンであろう容姿で一人旅。心細いし危険だろうとバスターも心配そうに問う。けれど彼女――フェイリヤと名乗った少女は大丈夫だと笑った。
「ま、アレよね。また行き会うことがあったら宜しく。たまには助け合いも良いもんでしょ」
「はい! あ、あのっ・・・」
 今の話で思い出した、とでも言うようにフェイリヤが差し出したのは幾らかの缶詰だった。聞けば、先程の治療薬の礼だと言う。幾ら何でも子供から貰えないと突っ返したが、生存者としての立場は同じだと言われて仕方無く受け取る羽目になってしまった。

「良い子だったね、あの子」
「ああ」
「・・・フェイリヤと言い、米子と言い、子供ってやっぱ良いわ」
 和む、とあたしが漏らすとバスターが笑った。子供好きのこいつにはさぞかし潤いになったろう。
「っ・・・うっ」
 そんな会話の最中、急にバスターがガクッとつんのめった。
「ちょっと・・・大丈夫?」
「ん・・・靴が」
 ひょいと覗き込めば、成る程ブーツの底が剥がれ掛けてベコベコなっていた。酷使に耐え兼ねたのだろう。寧ろ良く保った方だ。折しも立ち止まった場所から三軒先はスポーツショップ。こいつの履いていたような軍靴は無いだろうが、似たようなものなら見つかるだろう。
「新しいの探してきたげるよ」
「頼む」
 店に爪先を向けたあたしの背に、「これから何足靴を潰すだろう」という呟きが刺さる。
 何足潰すだろうか。何日この生活は続くだろうか。あたし達が生きていることを「当たり前」と言える日々に戻れるのは――いつになるのだろうか。


体力69→61/食糧66→67(フェイリヤとの交渉で+5/全体的に敬称略)
アイテム:安全靴、寝袋/銀色の鍵(フラグB)
◆治療薬:ゾンビ化しつつある者を元に戻す/使い捨て→食糧5と交換(フェイリヤ)

今日のS:【戦闘】建物の中でゾンビの集団と遭遇! 出口まで走れ! 8のダメージ! フォロワーの助けを得られるなら5のダメージ。 食糧:-2

今日のB:【探索】アウトドア用品店を捜索。平和だった頃が早くも遠い昔の夢のように思える・・・安全靴(【探索】で減少する食糧が本来より1点少なくなる。最低1)を発見! 食糧:-2
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